広報にしあわくら 2022年 9月号より

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目次

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特集 異国の香りを一皿に

あるの森 小林辰馬さん ポーンパンさん

古民家タイ料理&宿

中土居地区の天徳寺本堂横の古民家でタイ料理レストランを中心に営業されている小林さんご家族。2年前のオープンから西粟倉村内を盛り上げる元気の源の一つになっています。

明治6年頃まで修験宗として続いていた天徳寺では11月に最大のお祭りである大護摩供養が行われており、参拝する山伏姿の信者をはじめ一般の参拝客で大変賑わう場所だったようです。たくさんのお客さんで賑わう様子は当時の賑やかさを受け継がれているように感じます。

屋内の大きな囲炉裏はそのままに古くからの古民家を活用して、タイ料理レストランを始められた理由などをお聞きしました。

日本の古民家を利用して

日本の古民家でタイ料理という一風変わった組み合わせは、小林さんご家族の想いとコロナ禍での営業に対する発想の転換により生まれたものでした。

小林辰馬さん(以下敬称略):僕と妻がお付き合いをはじめて、家族ぐるみでも付き合うようになって、僕の母と妻がタイの人へ日本の文化を紹介するため、日本の農村体験だとか、古民家体験を始めたいということで民宿をするつもりで物件を探していました。母は元々日本の古民家が好きで、外国の方へその魅力や素晴らしさを伝えたいという気持ちがあったみたいです。妻もタイの人に日本の文化を伝えたいと考えていて、そんな中、たまたま見つけたのがこの物件でした。

でも、コロナが流行りだしてしまってタイ人向けの民宿をすることが叶わなくなってしまったので、逆の発想で日本の人にタイの文化を紹介しようという流れでタイ料理のレストランをすることになりました。

お店の「あるの森」という名前の由来は初代看板犬の「アル」と西粟倉の森林のイメージで「あるの森」としました。もう一つの隠れた意味として、茅葺き屋根や囲炉裏や土間など時代のふるいにかけられて姿を消していったものたちや、ゆっくりと静かに流れる時間や空間が「有る」という意味ももたせています。

歴史ある場所を引き継ぐ

小林:ここ天徳寺がお寺ということでその昔は人が集まる場所だったことや、夏祭りなど、中心になって行事が行われていたというお話も聞いて、そんな場所や流れを引き継いで人が集まれる場所にしたいなと思っています。

2年やってきて、最初はお客さんにタイ人がタイ料理をやっているということをあまり分かってもらえていなかったんです。お魚の鯛料理屋だと勘違いされていることもありました。遠くからインスタグラムやインターネットで調べてきてくださる方にはどんな雰囲気か分かって来てもらえるんですが、お仕事の関係で来られたりする方には「古民家でタイ料理というのは奇をてらっているのかと思ったが、まさか料理人がタイ人の奥様だったとは!」と驚かれる方や、「そのギャップが良い」と言ってくださる方もいらっしゃったり、ご意見も様々で面白いです。

コロナ禍ということもあってやはり大変でしたが、ありがたいことにお客さんが来てくれて、家族みんなで楽しくやっています。

タイと日本をつなぐ

ポーンパンさん:タイの大学で日本語専攻に進学したのが、日本に来ることになったきっかけです。なかなか実際に日本語を使う機会がなく、あまり話せなかったので、いつか日本に留学したいと考えていました。大学卒業後に日本に行くことになり、最初は岡山県の笠岡市で2年間ホームステイをして専門学校に通っていました。その後の就職先が美作市でそこでは観光関係の仕事をしていました。もう日本に来て8年目になります。タイにいる時は2年ほど日本で留学をしたらタイへ帰ろうと思っていたんです。でも気づいたらずっと日本にいますね(笑)。みんなからどうして日本が好きなの?とよく聞かれますが、ここ!というのではなくて、日本の人や、雰囲気が感覚的に好きなんです。タイの国自体が日本ブームというのもあって日本の物や可愛いものは子どもから大人まで人気です。

元々営業を始めた目的はタイの人にもっと日本の良さを知ってもらうためでもあるので、お店のタイ語版のホームページも開設しています。ちょうど2、3年前はタイの人たちの中で日本に来たら、都会ではショッピングを楽しんで、田舎の方で古民家に泊まるということが流行っていました。だから、タイの人は西粟倉村のことを絶対に気に入ってくれるだろうと思うんです。みんなが飽きないように工夫してこれからもやっていけたらと思っています。

西粟倉の魅力を伝えていく

ご家族みなさんで協力しながら「あるの森」を営まれている小林さんですが、意外な一面もありました。

小林:昔は飲食関係の仕事には全く興味はなかったんです。美作市で飲食店に勤めていましたが、そのお店を始められた方と僕が小学生のころから繋がりがあってオープン時から呼んでもらって7年程お世話になりました。お客さんと接することが好きでずっとホールスタッフをしていましたね。調理が好きになったのは最近なんです。

西粟倉って本当に自然がたくさんあって、飲食店をやっている身からすると魅力のある食材もあって、交通のアクセスも良いので、自然やジビエとかを楽しんでいただけたらと思っています。そしてコロナが終息したらタイの人に宿泊も含めて西粟倉を紹介していきたいです。

終始笑顔で今までの経歴をお話してくださった小林さんご夫妻ですが、お二人の雰囲気そのままに、古民家の中に優しさとタイの文化と日本の文化が混じり合っているそんな素敵な空間を創りだされていました。

〈デザインについて〉
9月は、木々が夏の間にしっかり蓄えた栄養を実らせ始めます。美味し物が溢れてくる季節。美味しそうな色で彩りました。

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