村のでんき会社ってどうなっとん? 〜広報にしあわくら 2024年7月号より〜

この記事の最後にPDF版のリンクをご紹介していますので、是非ご覧ください。

解説!村のあれって どうなっとん?

西粟倉の「今」を紐解く

今月のテーマ 村のでんき会社ってどうなっとん?

はじめに

令和6年5月15日構造改善センター(旧農協)で「西粟倉百年の森林(もり)でんき」の太陽光発電設備工事竣工後の落成式が行われました。この式典には、6年生も参加し、自分た
ちが考えた発電施設の名前を発表しました。

その名前は「みらい」

この名前は、村営の水力発電所の愛称である、「みおり」、「めぐみ」に共通している文字”み”が入っていること、「これからの”みらい”に再生可能なエネルギーが増え、人々の暮らしが幸せになってほしい」、「今頑張れば、未来が良くなるから」という気持ちから名づけられました。

村内には、水力発電所やバイオマス施設(薪ボイラー、熱供給ボイラー、ガス化発電)といった様々な施設があり、再生可能エネルギー事業(以降、「再エネ」)が進んでいます。

今回の特集では村が掲げる「百年の森林構想」の一端を担う会社、「西粟倉百年の森林(もり)でんき」が、どのような活動を行っているのか、また今後の計画などインタビューを行いました。

PPA事業にかかわったみなさん
始動開始!
「西粟倉百年の森林でんき株式会社」とは?

「西粟倉百年の森林でんき株式会社」(以降百森でんき)は令和5年3月28日設立されました。地域おこし協力隊である代表取締役社長の寺尾武蔵(てらおたけぞう)さん、および令和5年10月から従業員として入社された鈴木(すずきじゅん)潤さんの2人で運営を行っています。

左記のロゴは、村内の合同会社セリフ(代表:羽田知弘さん)が制作しました。寺尾さんの「地域に根差し、愛される企業になるために、村の特色を活かしたロゴにしたい!」という思いを組んで作られたデザイン、ロゴには西粟倉村の豊かな森林を象徴する常盤(ときわ)色が選ばれました。この色には「常に変わらないこと」、「長寿や繁栄」といった縁起の良い意味があります。

百森でんきのロゴ
ー どのような経緯で西粟倉村でチャレンジする事になったのですか?

【寺尾さん】私は、高知県で生まれ育ち、高校を卒業後,四国電力(株)で発電関係の仕事に従事していました。勤続23年、様々な業務をさせていただき、一人前の社会人となるべく成長しながらも、将来的には独立して、自分の会社を持ちたいと思い、令和4年に退社しまた。次の活動場所を検討している際、縁があり西粟倉村で「地域新電力会社」を立ち上げる話があると知り、上山副村長(当時 地方創生推進室 参事)や白籏さん(産業観光課)との面談でお二人の「村の将来的な成長・発展を願う熱い思い」に感動し、西粟倉に移住することを決意しました。

ー 百森でんきが行っている教えてください

【寺尾さん】現在、当社の手がける事業は大きく分けて3つあります。1つはメイン事業の「太陽光を利用したPPA事業」、2つ目は村にある再エネ設備の運用・管理、そして3つ目は、地域活性化の一環として様々なイベントヘの出店や、自社でのイベント企画も行っております(令和5年7月に開催した百森でんき映画祭など)。

右が寺尾 武蔵(てらお たけぞう)さん、左が鈴木 潤(すずき じゅん)さん
ー PPA事業について簡単に教えてください

【寺尾さん】PPA事業(PowePurchase Agreement)とは、契約をいただいたお客さまの家の屋根をお借りし、当社が太陽光発電設備設置・運用をします。その発電した電気をお客さまに使っていただき電気料金をいただくシステムです。今、PPA事業は村と連携して公共施設への導入を中心に行っていますが、近いうちに村の一般ご家庭や民間企業の方にも利用できるプランをご提供できるよう、準備しています。

構造改善センターの太陽光発電
ー 再生可能エネルギー施設の管理はどのようなものですか?

【寺尾さん】村内には水力発電所やバイオマス施設など、たくさんの村営再生可能エネルギー設備があります。私たちは、村から委託を受け、その再エネ施設の管理を行っています。

木材を利用した熱供給

【寺尾さん】当社の管理しているバイオマス施設は2種類あり、1つは熱供給ボイラです。

木質チップを炉で燃やし、温水を作ります。炉の熱を効率的に温水へ伝えるため、定期的に溜まった灰などの清掃を行います。できた温水は、地下に埋設された断熱配管を通って小学校などの公共施設へ送られ、暖房や給湯に使われます。あわくら会館の暖房もここからの熱で行われています。また、チップの燃焼後に出る灰は、畑に撒けば肥料にもなるため、すべてが有効活用されます。

小型ガス化発電

【寺尾さん】もう1つの施設は、小型ガス化発電です。これは木質チップを単純に燃やすのではなく、空気の供給量を調整しながら不完全燃焼させます。そうすると、チップから真っ黒な灰と一酸化炭素の2つが生成されます。この一酸化炭素は可燃性であるため、エンジン発電機の燃料として利用されます。発電した電気は、ゆうゆうハウスへ送られています。

チップボイラーでの作業の様子
小型ガス化発電
災害時の非常用電源としての役目も

【寺尾さん】ゆうゆうハウスは、災害時の避難場所に指定されているため、万が一停電しても、この設備を運転することで非常用電源として利用することもできます。

体が真っ黒になりながら作業

【寺尾さん】ここで出た灰は、チップボイラーとは違い真っ黒です。作業時は防護服やゴーグル、マスクをつけて行いますが、粒子が細かいためどうしても全身真っ黒になります。作業後に鼻をかむと、ティッシュが真っ黒になるほどです(笑)。

小水力発電 西粟倉村第2発電所みおり

【寺尾さん】吉野川の水が、取水口から入ります。写真の鉄格子のような設備(スクリーン)がざるのような役目をしており、落ち葉や枝、大きめの石などを取り除き、きれいな水にします。その水は、地下に埋没した配管を通って、下流の発電所まで届けます。水力発電で一番大変なことは、このスクリーンの清掃ですね。大雨や台風の時は、すぐに枝や葉っぱが詰まって水が入らなくなるため、取り除く作業を行います。

発電機の写真
ここで枝などを取り除きます
この棒は手作りです
ー 仕事をするうえで大事なことはどのようなことでしょうか?

「仕事は親切、世のため人のためのお役立ち」

【寺尾さん】これは私の「仕事」に対して持っている信念のような物なのですが、「仕事は親切、世のため人のためのお役立ち」だと考えております。業種・業態を問わず、仕事の本質とは「自分の持っている知識や技術を使った誰かに喜んでもらう、お役に立つ、世界をよくしていく事」です。私はその考えが正しいJとなのかどうか、自分の人生を使って実証したくて独立起業を目指していました。そしても入っ1つ、我々には「寿命」があり、人生には必ず終わりが来ます。ですので、この考え方をを次の世代へつなぎ続けていく事が重要な使命なのです。

人も地球も幸せに、未来へつなぐエネルギー

百森でんきは電力会社ですが、ただ単に電気をたくさん売ってお金を儲けるだけが仕事ではなく、「再生可能エネルギーとしての電気」を使って脱炭素に貢献(地球に良いこと)して、当社の電気を使ってくれたお客さまの生活を豊かにし、幸せに貢献(人に良いこと)したいと考えています。今は将来ビジョンも何も無い、漠然とした目標ではありますが、そんな思いを込めて、当社の経営理念は『人も地球も幸せに、未来へつなぐエネルギー』としています。

百森でんき映画祭 自転車を漕ぎ電気をため上映を行います
ー 百森でんきが目指す未来を教えてください

再エネ施設を増やし、村の電力消費におけるゼロカーボンを達成し、電気をすべて村内産にする

【寺尾さん】現在、既存の村営発電施設である、(水力、太陽光、バイオマス)、水力、太陽光の発電量は、村全体の消費する竃力量の約6割ほどを担える状態です。今後は、当社のPPA事業で公共施設へ太陽光パネルを設置して行き、令和8年度末までに残りの約4割を発電できるようになるのが当面の目標です。また、太陽光以外でも、村の自然や生態系を壊すことなく、調和のとれた再エネ施設(水力、風力、バイオマスなど)の新規開拓も検討しており、『村にあるもので、村の生活を豊かにする』ためにできる事を考え続けていきます。これらを進めながら、水カ、バイオマスなどの再生可能エネルギーを今よりもっと創出したいと考えております。

そして、村の消費する電力をすべて村の施設で発電できるよう目指します。

ライフスタイルを変え、C02をゼロに

【寺尾さん】また私としては、本当「脱炭素・C02排出ゼロ」を実現するためには、ただ再エネ発電施設を増やすだけではダメだと考えております。私は、電気を利用する「人のライフスタイルを変える」ことが重要だと考えています。

人と電気の関係性を表現するならば、これまでは『人間ファースト』だったと言えます。人々の生活や活動に応じて、必要な量の電気を作っていたイメージです。ですが、脱炭素な社会へ舵を切った今、『電気ファースト』にシフトチェンジしなければいけないと考えています。再生可能エネルギーは自然から得られるもの。当然の如く、季節や天候などによってエネルギー量が増減します。そのため、その日の発電量に応じて人々の生活を臨機応変に変えていけるような、本当の意味で地球に寄り添う生活スタイルヘの転換が求められているのではないかと思うのです。

そんな思いを伝えるべく、これからの世界を担っていく子供たちへ向けた出前授業や、イベント等への出店を通して、もっと「電気」について知り、親しんでもらうための活動も続けていきます。

学校での出張授業

広報にしあわくら7月号全文は以下でご覧ください。

広報にしあわくら2024

前のページに戻るには、ブラウザの「戻る」矢印をタップしてください。