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目次
特集 人を元気にする存在
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社協だより
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特集 人を元気にする存在
人と犬のかけはし
1月22日、あわくら会館の一角で子どもたちの輪の中の中心になっていたのは、スクールドッグのスーでした。
犬は、子どもたちにとって言葉を発さないからこそ魅力的で、でも自分と同じ目線になって寄り添ってくれる。スーの表情や行動から、自分がどうするべきかを考えて、思いやる。それは生き物に対してだけではなく、人と人とが接する時にも大切なことです。
子どもたちがより元気に、そして人との関係性を築いていく活動をされている「ソーシャルアニマルボンド」の青木潤一さん(大茅地区)。今回は実体験を踏まえながら、この活動で何を伝えられているのかお伺いしました。
子どもと大人と犬と
青木さん(以下敬称略):「動物介在教育」というとあまり聞き慣れない言葉だと思いますが、学校や子どもたちがいる現場に動物を介在させることで、非認知能力を身につけていくこと、そして子どもたちが安心できたり、楽しむことのできる空間をつくる、という大きく分けると2つの目的を持って活動しています。非認知能力とは、学力テストやプレゼンテーションなどのように数値や人から評価される能力ではなく、例えば、人を思いやる気持ちであったり、周りの人と協力する力の事などを指しています。
15年程前、京都で教師になり、初年度から不登校の生徒がいたことがきっかけに、それからずっと「あの子の居場所はどうやったら作れたのだろう」と考えていました。その時に、東京で動物介在教育を取り入れている学校があることを知り、教室に生き物がいれば子どもたちにとって学校がより楽しくなるんじゃないかと思い、実際に自分が働いていた学校で犬(スクールドッグ)を飼い始めました。
動物介在教育自体にこうしなければいけないという定義はなく、最初は本当に手探りでしたが、学校での子どもたちの様子から僕たち大人や教師にはできないことを、犬がしてくれるというのをすごく実感しましたね。一緒に散歩をしたり、お世話をする中で、自然とコミュニケーションが生まれて、子どもの想いと大人の想いの間を取り持ってくれているような感覚でした。
「優しく」を考える
青木:村内では、「ソーシャルアニマルボンド」としてAwesome!!や元気っこで活動させていただいたり、あわくら会館で「わんこ読書会」を開いて子どもたちを対象にスクールドッグと触れ合う機会を設けています。もちろん犬が好きな子、嫌いな子がいるので反応は様々ですが、犬と触れ合うことで子どもたちにものすごく変化があることがわかります。犬がとても好きな子は愛情表現としていきなり抱きついたりするのですが、そこで、犬の立場になって考えてもらうと「いきなり抱きつかれるとびっくりして怖いよね」という話を伝えています。すると、犬の気持ちを考えて触れてくれるようになったり、大人が入らなくてもその事を他の友達に教えてくれるんです。反対に、犬は吠えるから怖いとかその子の中の固定概念だけで苦手意識を持っていた子は、実は触ると気持ちいいんだとか、意外と可愛いと感じることで、すっと近寄って優しく接してくれるようになります。犬は言葉を発さない代わりに身体で表現するので、その表現から今何を思っているのかなとか、どうしたいのかを子どもたちが相手(犬)のために考えだすんです。みんなで散歩に行こうとなると、誰が何する?どうする?と子どもたちが一つのチームになって、新しい友達ができたり、大人とも交流が生まれます。そんな風にスクールドッグを通して培った対人関係や、コミュニケーションをとる方法が結果的に社会で活かされる力になると思っています。
人と人を繋げる
青木:西粟倉村に強く惹かれたきっかけは「百年の森林構想」でした。構想の内容は森林に関することですが、50年後、100年後のためにという考え方がとても素敵で、自分の中の教育に対する考え方と通ずるものがあったんです。目先のことだけで子どもたちへの教育を行うのではなくて、その子の20年後、30年後を考えた時に、多分もっと先の未来を見越して子どもたちの「今」と向き合うのが教育の良さであり、本来そうすべきだと思うんです。そして、この構想を掲げている西粟倉村であれば、50年後、またその先の西粟倉村やこの社会を担っていってくれる子どもたちが教育の中から育っていってくれるではないかと考えたのが村に来ようと思った動機です。
大人や教師って子どもに対して良かれと思って「こうしたらいいよ」って言ってしまいがちなんですが、活動をする中で、子どもたちのペースを守ってあげながら、人との関係性を築いていくことを大事にしています。「ソーシャルアニマルボンド」という事業所名に「くっつける」という意味の「ボンド」を付けたのも、人と人、人と生き物がくっついて、繋がってほしいという想いを込めました。
今後は、この活動で子どもたちがより笑顔に、元気になり、そしてそこにいる誰もが幸せになる。そんなストーリーを大勢に届けることができればと思っています。
「生き物」というきっかけから「優しくする」、「思いやる」という気持ちを学んだ子どもたちがまた、周りの人に思いやりの心を広めてくれているのだと感じました。
広報にしあわくら2月号全文は以下でご覧ください。
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