広報にしあわくら 2023年1月号より

この記事の最後にPDF版のリンクをご紹介していますので、是非ご覧ください。

目次

特集 自らできる力を育む
SDGs未来都市
あわくら会館
にしあわくらっ子
村からのお知らせ
社協だより
その他

特集 自らできる力を育む

モンテッソーリ教育

別府地区で「にしあわくらモンテッソーリ子どもの家」を立ち上げられ、活動されている岡野真由子さん。学校のように教師が前に立ち指導する方法ではなく、子どもたちが自ら必要な活動を選択する、子ども主体の教育法の「モンテッソーリ教育」を行われています。教室に来た子どもたちは自分が今必要だと思う活動を自分で選んで、取り組み始めますが、その一生懸命なまなざしと集中力には驚かされます。

今回は岡野さんに教室を立ち上げられたきっかけや、子どもたちへの想いを教えていただきました。

自分で選ぶ

岡野さん(以下敬称略):2018年に「にしあわくらモンテッソーリ子どもの家」を立ち上げて、現在、30人ほどの子どもが通ってくれています。半数が村内の子どもで、半数は美作市、津山市、鳥取県から通われている方もいます。教室でのスケジュールは2時間のうち、大半を子どもたちの自由選択の時間としています。自由選択では、子どもたちが自分の好きな活動を選んでは、片付けるを繰り返します。絵の具で色を塗ったり、図形を元に絵を描いたりと活動は様々です。子どもたちと接するときは英語を交えて、必要に応じて個別に対応しています。最後の15分は集団の時間として、みんなで一緒に歌を歌ったり、絵本を読み聞かせたりしています。

人は0歳から6歳までのたったの6年間で、自力で寝返りができた!という段階から、自ら読み書きできるようになるまで、急速な変化・成長を遂げます。発達の順序はすべての子どもに共通していても、いつ書きたくなるか、数字を数えたくなるかは一人一人違います。子どもは、周囲の環境に反応して行動を選ぶので、好き放題やっているというよりも無意識的にその時に必要な活動を選んでいるんです。

殻を破る瞬間

岡野:子どもたちと接しているといつも発見がたくさんあります。4歳くらいの子どもはお友達に対して強烈に興味を示し出す瞬間があります。1日前まではお友達という存在に気づいていなかったのに、ある日を境に、ずっとお話をして積極的に関わろうとする。この行動は、日本でもアメリカでも全く一緒で、「いのちのしくみ」は全世界で共通だと発見したときは感動しました。一方で、子どもはひとりひとり本当に違っていて、でも必ずどの子にも高みがあってその子のカラーがあります。その子がまだ苦手なことを克服できていない、いわゆる殻をかぶっている状態から、殻を破ればもっと伸びるし、可能性は無限大であることにも感動します。例えば水を嫌がったり、自分は失敗すると思うことはしない子でも、この教室で時間をかけてでも何かできることが分かれば、殻を破って人格が変わるほど激変します。私はその殻をほぐしてあげて、その子を閉じ込めてしまっている原因をとっぱらってあげられたらと思っています。

モンテッソーリ教育との出会い

原体験として阪神淡路大震災を経験したことで、高校生の時、自分の命をどうやって活かしていこうか模索している中で、国連で働きたいと強く思い大学へ進学しましたが、教育にもすごく興味を持つようになりました。卒業後は、教育関係の企業へ就職し、実際の教育現場も経験しようと思って英語の専門校で英語を教えたり、仕事をしながら教育について勉強していました。そのときにモンテッソーリ教育についての本も読んだことはありましたが、実際に深く関わることになったのは、夫の海外赴任が決まりアメリカのシンシナティに住んだことがきっかけでした。たまたま家の近くにモンテッソーリ教員養成校があり、乳幼児についてちゃんと勉強してみたいと思っていたので、1年間は座学、2年目は現地校で教えながら学びました。実習先の学校は小学校と幼稚園が併設されていて、今までこんなに命が輝いている子どもを見たことがないと衝撃を受けました。同時にここで働きたいと思い、モンテッソーリ教育の教師になることを決めました。

西粟倉での活動

アメリカで5年間ほど暮らしたころ、夫が西粟倉に転職することになり、とにかく行ってみようという気持ちで村に来ました。西粟倉に来た当時は周りに赤ちゃんがおられるお母さんが多くて、知り合いが知り合いを呼ぶような形でみんなが家に集まってくださるようになりました。そこでお話をしているうちに「西粟倉でモンテッソーリ教室を開いて欲しい」と言っていただいて、岡山県だと岡山市や倉敷市にモンテッソーリ教育を行っている園が多いですが、近くにはなかったので自分で始めてみようと思いました。

活動を始めるにあたって村の教育委員会に相談させてもらった時には、私がしたいことについて「是非やってほしい」と後押しをしていただいたり、周りのみなさんが応援して力を貸してくださって、導かれるように「にしあわくらモンテッソーリ子どもの家」を立ち上げることができました。

「いのちを育てる」

岡野:モンテッソーリ教育という看板を掲げて教室をしていますが、モンテッソーリ教育だけが正しいと思っていなくって。大切なのは、その子が「育まれる」ことだと思っています。その子にとって育まれるチャンスをこちらが間接的に用意をして、足りないものを教え込むとかでもなく、子どもが主体だからと言ってなにがなんでも一人でさせるわけでもありません。固定概念をとっぱらって、その子のいのちのしくみが育てばいいと思って活動しています。

今では未来の保育者にも教育について教える機会いただいているので、西粟倉で実践していることを若い方に伝えていけたらと思っています。そして、目の前の子の高みを見つけて伸ばす、そういう子ども主体の保育が広がればいいなと思います。

「自分にお役目が与えられていると感じるんです。」と今までの経験を振り返りながらお話してくださった岡野さん。子どもたちの選択を尊重するその目差しは、優しく、そして温かく、それも子どもたちの土台づくりの要素の一つになっていると感じました。

イメージムービーを公開しています。

広報にしあわくら1月号全文は以下でご覧ください。

電子書籍版はこちら〈okayama ebooks〉
PDFデータでご覧になる場合は下記リンクをご覧ください。広報にしあわくら2022

前のページに戻るには、ブラウザの「戻る」矢印をタップしてください。